*この作品は漫画や小説、イメージボード、設定、といた様々な表現方法が乱雑に、雑多に使われています。




時の果たてのガンディーヴァ




Gundiva in the end of time #1
プロローグ #1

いつの頃からか人を化け物に変える病が蔓延し始める
彼ら(破戒神)は超常の力(強大な力)を持ち社会は甚大な被害を被った…

時を同じく人の中から超常の力(強大な力)を持つ者が生まれ始める
社会は彼ら(能力者)を徴集し対敵対者組織(守護省)を設立…

破戒神(強大な力)の脅威に対し守護神(強大な力)を派遣した…






時の果たてのガンディーヴァ 設定資料集

破戒神(ハカイシン)
超常の力を持ち、社会に甚大な被害をもたらす存在。
巨大なモノから小動物サイズまで様々な大きさ、形状、種類が確認されているが、その多くに 共通する特徴として既存の動植物の四肢等をバラバラに組み合わせた様な体躯がある。
地方によっては禍神、魔憑神(マガツカミ)、マガイシンとも呼ばれる。

守護神(ガンディーヴァ)
超常の力を持ち、守護省に仕える人や亜人の意、及びその役職、神職名。
地方によってはシャンディーヴァ、フランディーヴァとも呼ばれる。元は火を司る神の名称。

守護省(シャンダーラ)
またはシャンダラとも。守護神を管理する組織で、守護神をもって破戒神の対応や各国家間の揉め事の対応を行う。




Gundiva in the end of time #2
イメージボード #1












祭神(イフタル) / 巫女、巫子(イフタリ)
・先史文明時に作られた超兵器の一つ。一種の人工生命体。魂鋼(タマハガネ)といわれる半物質(物質の様な霊質の様な半エネルギー物質)で作られた半生命体。
・「命の火」能力者の中で、巫女/巫子(イフタリ)と呼ばれる能力を持った者が扱う事ができる。 祭神(イフタル)を能力者の肉体に「おろす」(神おろし)事で、能力者は祭神(イフタル)に変身、変態する。
・祭神(イフタル)は通常、姿形をなさず、仕える者にエネルギーとして寄り添う(肉体に宿る) 顕現時は能力者の「命の火」をエネルギー源に、仕える者の肉体を媒体に物質化して現れる。
・姿形:全長10〜20m程の巨人。宗教的な意匠が施されている。ある種、巨大な仏像、神像をしている。 先史文明時、多くの種類が作られ、その大半は戦闘的な能力を有している。
・能力者の肉体を媒体、変態させているので、通常、祭神が傷つく事はない。(魂鋼(タマハガネ)でできた本体を雛形に能力者の肉体を変態させている。傷つくのは能力者の肉体)
・使い様によっては能力者の肉体はそのままに「命の火」のエネルギーだけで物質化する事(燃費は高いが)も可能。 能力者の任意の場所に祭神(イフタル)の腕や武器、(また全て)を出現する事(召喚)も可能。
「おろす」量や質をコントロールする事で、能力者は常人では考えられない筋力や防御力、超能力を扱える。
・巫女/巫子(イフタリ)とは先史文明時に作られた存在。能力者の中で祭神(イフタル)用(そのエネルギー源、使用者)に作られた。
・イフタルのイフは畏怖、すなわち神の意。畏れ敬うという意味がある。タルは祭るの意。頭を「垂れる」からきている。よって祭神と呼ばれる。
イフタリのタリは祭りを司る者の意。巫女、巫子、祭祀といった意味がある。
・現在においては守護神の主力。花形。また、国家の宗教の神の顕現、国家継承の神器として扱われる事もある。 祭神のほか、国津神、祭国神、軍神、戦神、武神と呼ばれる。




Gundiva in the end of time #X
シャーミン #1





  1. 私(シセイ)の父は、守護神(ガンディーヴァ) だった。

    秀でた守護神(ガンディーヴァ)ではなかった。
    しかし影で努力をおこなう、思いやりある守護神(ガンディーヴァ)だった。



  2. 守護神(ガンディーヴァ)とは超常の力を持ち、厄災から民を護る守人(タティー)の事を言う。

    厄災の類、守護者の役割は様々で、戦争時の兵役、国内外の紛争の解決や、村民同士の揉め事の仲介、村外に出没する破戒神(化け物)の討伐などがあげられた。



  3. その厄災の1つに月黄泉(ツキヨミ)というモノがある。

    月黄泉(ツキヨミ)とは人を破戒神(化け物)に変える厄災を指す。
    地方によっては月呼み(ツキヨミ)、月膿(ツキウミ)とも呼ばれ、月の満ち退きに導かれて起きると言われている。
    起こる範囲はおおよそ村落一つ分。
    村落等人の集う場所で前触れなく起こり、民を破戒神(化け物)へと次々に変えてしまうモノだった。


  4. ある日、月黄泉(ツキヨミ)が起きた。
    場所は人口1000ほどの小さな村落。

    その時、父はある地方での任務の帰りで、たまたまその村落に立ち寄っていた。

    そして月黄泉(ツキヨミ)に巻き込まれた。

    次々と人が破戒神(化け物)に変わり、まだ人である者を襲いだした。
    村は破戒神(化け物)で満ちた。


  5. 父は村人を守る為に“穢れ(ケガレ)”を吸った(のんだ)。

    穢れ(ケガレ)とは人を破戒神(化け物)へと変える汚れだと言われている。
    触れればたちまち姿形が変わる。

    しかし守護神(ガンディーヴァ)は穢れ(ケガレ)に強い。
    穢れ(ケガレ)を自らの体に吸い込む(のみこむ)力を持つ。
    町に在(あ)っては、町に漂う穢れ(ケガレ)を吸い(のみ)、月黄泉(ツキヨミ)に遭(あ)っては月黄泉(ツキヨミ)で漂う穢れ(ケガレ)を吸う(のむ)事が守護神(ガンディーヴァ)の生業だった。


  6. しかし月黄泉(ツキヨミ)の穢れ(ケガレ)の量は尋常ではない。
    並みの守護神(ガンディーヴァ)には余りあるモノだ。

    だが父は、村人を守る為、必要以上の穢れ(ケガレ)を吸った(のんだ)。
    そして、穢れ(ケガレ)の量に耐え切れずに破戒神(化け物)になった。

    民を守るはずの守護神(ガンディーヴァ)は民を攻め、守るべき民は死んだ。
    そして駆けつけた他の守護神(ガンディーヴァ)に父は討たれた。

    破戒神(化け物)として…


  7. この出来事はたちまち国中に知れ渡った。

    民は言った。
    父は直不(チョクフ)の罪を犯したと。

    守護神(ガンディーヴァ)は宗教上、神であり、神は柱と例えられる。柱がまっすぐに立っている事は“垂善(スイゼン)”といい、“善き事”であり、それは守護神(ガンディーヴァ)の責務だった。
    その柱を支えられず倒し、民を守れず、その役割をまっとう出来なかった事を直不(チョクフ)の罪と言い、守護神(ガンディーヴァ)にとって不名誉とされた。

    守護神(ガンディーヴァ)が守るべき民を殺すとはどういう事か!
    何の為の守護神(ガンディーヴァ)なのか?
    民を守ってこその守護神(ガンディーヴァ)、それが化け物(破戒神)になるとは…

    守護神を纏(まと)める守護省(シャンダーラ)でも査問会が開かれた。
    判決は、以下の通りだった。

    穢れ(ケガレ)を吸う(のむ)行為自体に間違いはない。
    責めは民全ての穢れ(ケガレ)を吸おう(のもう)とした事。 吸う(のむ)量を抑え、ある程度の民の犠牲は妥協し、人として残った民を守りつつ後退すべきだった。

    父に一定の配慮ある判決だった。


  8. しかし民は違った。

    父が直不(チョクフ)の罪を犯したのは、その徳が足りなかったからだ!
    守護神(ガンディーヴァ)の義務を怠ったから、神王が罰を下したのだ!!

    ふざけるな…!!!
    月黄泉(ツキヨミ)の中で大勢の民を救おうとした守護神(ガンディーヴァ)はこれまでいなかった。
    だが父は、自らの命も顧(かえり)みず、民を救う為、必要以上の穢れを吸った(のんだ)のだ。
    その思いも知らない民に、とやかく言われる筋合いはない!


  9. 民への憎しみが消えぬまま、1年程たった頃、私に悲劇が訪れた。

    超常の力が発現したのだ。

    ”超常の力を持つ者は理由の如何に限らず、守護神となり社会に奉仕しなければならない”
    この社会にある絶対の決まりだった。

    能力者の子には超常の力が出やすい為、予想はしていた。
    力の発現に〈私は父の子だ〉と思い、父を久しぶりに感じた事、父とのつながりが嬉しくもあった。

    しかし、この禁を破れば例え人であっても破戒神(化け物)として処される。 私はこれから父と同じ様に守護神としての道を歩まなくてはならなくなったのだ。

    能力の発現を親戚達は喜んだ。
    「良かったわねシセイ!これでお父上の汚名を雪(そそ)げるわね!!」

    なにが喜びだ?!なにが汚名だ!!父が不名誉であるモノか!!!
    なにより守るに値しない民の為に、穢れ(ケガレ)を吸って(のんで)自らの体を汚していかねばならない事が悔しかった…


  10. 抗いがたい現実に項垂れ(うなだれ)、私は守護神の養成学校へと編入した。
    そして守護神(ガンディーヴァ)の前段階である守護聖(ガンディーネ)となり、日々訓練を受けた。

    守護神(ガンディーヴァ)の基本的な務めともいえる破戒神(化け物)討伐の為の戦闘術。また、自身の能力にあった戦術の考察。
    戦場を有利にする指揮戦術の講義。軍において守護神(ガンディーヴァ)は自動的に下級指揮官やそれと同等以上の役職に就くからだ。
    その他、神としての地位を得た者がとらねばならない礼儀作法等々…

    守護神(ガンディーヴァ)は神であり、民より上の地位となる。 暮らしは格段に豊かとなり、様々な特権が与えられた。
    直轄地を与えられ、税を得る。民を下僕として扱う事が出来、下女もあてがわれた。




  11. しかし同時に様々な制約も受けた。
    民の揉め事を解決し、民の為に法を制定し、安寧ある社会という責務を負う。
    能力者の保護という観点から、結婚は自由にできず、望んだ相手と子を持つ事は叶わない。 戦争が起これば民を守る為、戦い、化け物(破戒神)が出れば討伐に出向く。

    そして定期的な禊(ミソギ)。

    禊(ミソギ)とは身に溜まった穢れ(ケガレ)を洗い流す事を言う。
    守護神(能力者)はただそこにいるだけで、無自覚に民から穢れ(ケガレ)を吸う(のむ)。
    如何に穢れ(ケガレ)に強い守護神(能力者)でも、 穢れ(ケガレ)は徐々に身に蓄積されていく為、定期的に禊(ミソギ)を行い穢れ(ケガレ)を落とさねばならない。

    〈なぜ民の為に身を汚さねばならない?民は守るに値しない!
    だが、守護神(ガンディーヴァ)の道は変える事はできない。
    ただ、守護神(ガンディーヴァ)にも様々な役職がある。内政に入れば身を汚すような事をしなくてもよくなる。
    ならば、私は戦績を積み上げ、内政を目指す!〉




  12. やがて、短期実務講習が始まった。
    講習とは実際に村落に入り、実地訓練を受けるというモノだった。

    私が向かう村落は、皮肉にも、かつて父が死んだあの土地だった。
    月黄泉(ツキヨミ)の後、新たに再建されたのだという。

    村落へ辿り着き、私は師となる守護神に会いに、村落の社へと出向いた

    守護神は通常、村落の社に居をかまえる。
    社は父の死後、造られたらしく、件の出来事以来、今では守護神が一人以上、在中する様になっていた。

    私を出迎えたのは、今後、私につき従うはずの従者(巫女)達と、マキスタと名乗る、この社の祭神でもある守護神(師)だった。
    歳は二十歳半ば。中肉で背はすらりと高い。 声は軟く(ヤワク)、ゆったりとした物言いで話しかけてきた。
    「ようこそいらっしゃった。守護聖シセイ。 あなたの事は守護省 (シャンダーラ)から聞いていますよ。
    上がどうしてこの地にあなたを派遣したのか… まあ、理由はわかりきっていますが(汚名返上)…
    私にはよく正不がわからないので、まずはそれにかまわず基本的な事を学びましょう。
    あなたの部屋を案内させましょう。そこで荷を解き、生活の準備をしていらっしゃい」

    私はあてがわれた部屋に行き、荷を解いた。
    小さいとは言え、きちんと設備の整った社だった。
    〈あの時、この社があって守護神が配備されていたら、父は死ななかったのかもしれない…〉
    その夜、苦い思いがジクジクと胸に広がるのを感じながら、私(シセイ)は床についた…


  13. 実務講習が始まった。
    私(シセイ)はこれまでと同様の戦闘訓練や社に来る民へ祝詞などの日用的な雑務を淡々とこなして行った。

    また、月黄泉(ツキヨミ)は起こらずとも(頻繁には起こらない)破戒神(化け物)の出没は日常茶飯事であったので、その討伐に従事した。
    (破戒神(化け物)は村外の森に住む野生動物からも生まれる。破戒神(化け物)は頻繁に村を襲った)
    私はひたすらに破戒神(化け物)の殲滅のみに力を注いだ。


  14. 私の超常の力(能力)は“道具の能力化”だった。
    道具を刺青(魔印)によって体内に吸収し、“その道具によってもたらされる効果”を顕現させる力だった。
    剣を能力と化せば斬撃を敵に食らわせ、銃を能力と化せば弾撃を敵に食らわせた。
    しかも、銃弾は無限に顕現する。
    私は銃弾の雨を降らした。


  15. 時には流れ弾が、民に当たる事もあった。
    しかし私は民の守りなど気にせずに、敵を屠った(ほふった)

    化け物(破戒神)は倒れる時、穢れを吐く。 私は穢れを出来るだけ吸わ(のま)ないよう注意した。
    その穢れに犯され、化け物(破戒神)となる民もいたが 私は躊躇なくその化け物(破戒神)も斬り戦績を積み上げていった。

    〈これを父は一身に受け止めたのだ。これは自業自得だ。お前達の事など知ったことか…〉

    強力な敵にはより強力な武器を。
    武器(能力)を吸収する度(たび)に、刺青ができる。
    刺青は日増しに増えていった。



  16. 一般的に民は社によく参拝をする。
    “神は身分尊きモノ”という概念がある為、民は畏怖をこめて神を奉る(まつる)のだ。
    また社は守護神(ガンディーヴァ)が在る為、穢れない清浄な聖域であり、民は自らの穢れを清めて貰う為に頻繁に出入りする。


  17. しかし私が来てからというもの、参拝する民の数は激減していた。民が不信感を顕にしたのだ。

    「民はあなたに対し不信をもっていますよ」

    1月程たったある日、マキスタに呼ばれこう言われた。
    私は無表情にこう返した。
    「民を守っていても敵は倒せません」
    「しかしですねー」
    「敵を倒す事、それが結局は民を救うのです」
    マキスタは何か言おうとして…そしてため息をついた。

    巫女達も声に出してこそ言わないが、私に対し、はっきりと不信感は顕(あらわ)にした。


  18. しかしその中にあって、ある一人の巫女は態度は違った。
    名をシャーミンといった。
    年の頃は15、6才ぐらい。初日からうるさいほど元気で、以降私に対して必要以上に気を使う(使いすぎる?)少しおかしな巫女だった。

    「さすがシセイ様です!今日もあっという間に敵を退治されましたね!災厄から我ら民を守って頂き、感謝申し上げます!!」
    「別に私は守っている訳ではない。ただ倒すべき敵を退治しているだけだ」
    「何を仰います!攻撃は最大の防御!!私はシセイ様の事を信じております!。シセイ様は間違っていない!!!」
    「いや、だから…」
    「ささっ、お風呂の準備はできております。さっぱりして来てくださいませ!」
    「…はぁ…」

    その圧倒的で訳のわからない勢いに私はため息をし、どうにも使用が無いので風呂に入る事にした。


  19. 私が風呂に入っている間にシャーミンは食事の準備をしてくれていたらしい。
    部屋に戻るとテーブルには豪勢な食事が並んでいた。
    「ささっ夕餉をどうぞ!シセイ様の好物も準備させて頂きましたゆえ!」
    「…」
    しようが無いので食べた
    「…っ!……おいしい…」
    いい塩梅の味付け。隠し味にも一工夫がなされ、高い技術を感じた。
    料理に詳しくは無いが、一朝一夕で身に付くモノではないのだろうか…




  20. 私が感心して料理を見ていると、隣から
    「シセイ様、お酌をいたしますね」
    「ん?…ああ……えっ?!」
    見れば胸と腰以外、露(あらわ)になった服(水着の様な服)をきたシャーミンがいた…
    「ブッ!…ちょ…お前…なんて格好してるんだ…」
    「いえ、シセイ様を接待するにはこれぐらいの事しなければ…。雑誌で見ました。殿方はこうすると喜ぶと…」
    頬を染めながらモジモジしてお酌をしようとするシャーミン。
    〈私は女だ!…いや、違う!、こいつ…変だ!〉
    「い…いや結構だ…。私は一人で酌をするのが好きだから…」
    「ええーそうなんですかー?残念だなー、きっと喜んでくれると思ったのにー」
    〈いやだから私は女だって…〉
    そんな私の気持ちに構わずシャーミンは手に持った酒をぐいっと仰(あお)ぐ。
    「はあ〜おいし〜♪」
    そういって空になった杯に酒を注ぐ。そしてまた一気に酒を仰ぐ。
    モノの5分でシャーミンは酔いつぶれてしまった。


  21. 「…ふ…変なやつだ……」
    こんな私を持ち上げても何の得にも成らないだろうに。
    おもわず苦笑した。
    〈…〉
    久しぶりに笑った事に気がついた。
    私はシャーミンをまじまじと見る…
    「シセイ様〜ムフ…」
    〈…このまま私の部屋に居座られたのではかなわないな…〉
    私は酔いつぶれたシャーミンをおぶり、巫女部屋へと運んだ。


  22. 部屋の戸の前まで来た時だった。
    ふと戸の向こうから巫女たちの話し声が聞こえた。
    「シセイ様は相変わらず、攻撃一本やりね。今でも民に負傷者が出ていると聞くわ」
    自分でもはっきりと心が冷えていくのを感じた。
    〈なにをしているんだ…私は……〉
    シャーミンを戸前に座らせて自室に戻ろうとした時、別の巫女の声が続けて聞こえてきた。
    「…でも…被害者の数は前より減った様に感じるわ…。確かに犠牲者は出ているけど、逃げ惑う人を擁護していたら破戒神(化け物)はさらに民を傷つけると思うの。よくやってると思うわ…」

    心が定まらない…
    何か漠然としたものが胸に渦巻く……
    どうしていいかわからないもどかしさに私は急いでその場を立ち去っていた。

    心の中に小さく暖かい何かが広がるのを私は感じていた…


  23. その後も私はいつもと変わらぬ態度で日々を過ごした。

    巫女達もそれは同様だったが、以前の様な棘々(トゲトゲ)しさは薄らいできた様に感じられた。 私を見るその瞳も、険を帯びてはおらず、ただただ巫女が祭神を見る瞳(め)になっていた。
    口に出して褒めるでもないが、かといって攻める訳でもない…。 自然に、感謝の態度をとってくる。

    参拝客は以前ほどではないが、チラホラと見える様になった。 どの顔も私が助けた者達で、中には私の知らない者…おそらくは連れ立ってやってきた者も見る事ができた。
    わたしが化け物(破戒神)を討伐するのはそれが仕事だからだ。 しかし同時に、その事に小さな安らぎを覚えた。

    民が好きかと問われれば、もちろん今でも、好きでは無いと答えるだろう…しかし以前ほど、その問いが心を占める事はなくなっていた…



  24. この社に来て数ヶ月ほどたったある日。
    いつもの様にシャーミンが酔いつぶれたので、いつもの様に巫女部屋まで運んだ。
    ここ最近の私の仕事の1つと化していた。
    「守護聖様……!申し訳ありません。下女が主を使うなど…」
    巫女の一人が慌てふためき頭を下げて言う。
    「いや、いい」
    寝台にシャーミンを横たえるともう一人の巫女が布団をかけながら呟いた。
    「以前はここまで奔放ではなかったのですが…最近、富に羽目を外しておりまして…」
    「そうなのか?」
    意外な言葉に思わずそう聞き返した。
    苦笑しながら巫女が「はい。昔はもっと落ち着いた…というよりも陰に塞ぎ込む様な性格でしたから…特にあの出来事以来さらに暗く篭るようになりまして…」
    「あの出来事…?」
    「あ…いえ……」
    巫女がしまった、という様な顔をした。



  25. 小さな小さな胸騒ぎを感じた。
    以前から妙に感じていたが、特に気にする事も無いだろうと。そう無視してきた疑惑だった…
    しかし、巫女の表情を見た瞬間、それがみるみる内に大きくなり心を占めていく…
    私が言うのもなんだか、この社に来た頃の私は皆に嫌われていた。
    しかしシャーミンだけは私に対し無条件に明るく接した。
    それも何か無理をしていると感じる程、異常な態度で…
    なぜそうなのかはわからなかったが、その原因がその出来事に関係があるとしたら…?



  26. 「あの出来事とは何だ?それはどういった事なのだ?」
    「………」
    「話してくれ!シャーミンはなぜそこまで私につくすのだ?!」
    いつしか私の言葉は険を帯びたものになっていたらしい。言い淀みながらもオズオズと怯えた声で巫女は話し始めた。
    「それは…その…この子の父親が破戒神(化け物)に殺された出来事にございます…」
    「…父親が殺された………?」
    「はい………私はこの子と同郷なのですが…昔はこの子、守護神様という存在を嫌っていましたから………守護神に父を殺されたと…」
    〈?!〉
    「ある日、私共の村落で月黄泉(ツキヨミ)が起こったのです。そしてその場に居合わせたのが、シセイ様のお父上で在らせられました」
    「父が?」
    「お父上は常套(ジョウトウ)にのっとって、破戒神(化け物)を退治されました。救える可能性の高い者から民を救っていかれました。 結果、民の半数が死にましたが、月黄泉(ツキヨミ)にあった村で半数もの民が生きながらえたという事は奇跡です。しかも守護神はたったの一柱…。 私の父も私も、そしてこの子も、その時命を助けて頂いた一人になります」
    「………」
    「しかし、この子の父は破戒神(化け物)に変化し守護神様に殺されました。 この子はその後、、あなた様のお父上に憎しみをぶつけたのです。
    社まで赴(おもむ)き、「なぜ父を助けてくれなかったのか?!父は変異の途中だった。穢れを吸って(のんで)頂ければ助かった!!」と…」
    胸の中にどす黒い感情が沸き立ち体が震える…。久しく忘れていた感覚が蘇ってくる…
    「数年後………あの出来事が起こりました…」



  27. 「この子はいいました。自分はなんという愚かで、手前勝手な事をしてしまったんだと…
    それが守護神様の常套(じょうとう)であった事。何よりも民を守ろうとする強い意志がお在りになる尊い方なのに…。
    守護神様の思いをしらなかったといって、それではいい訳にはならない。償わなければならない、と…
    あなた様が守護神としての道を歩まれた時、この子は巫女であった私の所にやってきました。
    私も巫女となり、いつかあなた様に使え、その心を癒したい、といつも語っていました。」
    「………」
    「私にも非があります。この子がお父上に会いに行くといった時、止めるべきだった。
    でもその気持ちは痛いほどわかって…止める事を躊躇(ためら)ってしまった…」



  28. 重苦しい沈黙が続いた。どうすれば良いのかわからない、この胸のモヤモヤを抱え突っ立ていると、シャーミンが目を覚ました。
    「…あ…すみません…またやっちゃいました?えへへ〜…あれ…?」
    目を覚ましたシャーミンの胸倉をつかみ、引き寄せ、顔をねめつける。
    「お前が…父を唆(そそのか)したのか…」
    すぐに悟ったのか青ざめるシャーミン。
    「わっ…わた……しは………」
    怯え、項垂(うなだ)れるシャーミンを見て私は手を話した。
    部屋へ戻ろうとした時、私の服を掴みシャーミンは叫んだ。
    「私は罪を犯しました!!」
    「……放せ…」
    「償いきれるモノではないけれど…でも、償いたい!だから!!………許してくだ…」
    「放せええ!!!」
    私の叫びにビクッと体を震わせ手を離すシャーミン。
    そしてもれる嗚咽を背に私はその場を立ち去った。



  29. 翌日、私はマキスタ(師)に呼ばれた。
    「昨日シャーミンという巫女から職を辞たいといってきました」
    「…」
    「神職(守護神)と違い、民の職の選択は自由です。しかし職とは社会の基盤だ。自由だからといって、ただ一言、はいそうですか、と頷(うなず)けるモノではないので理由を聞きました」
    「師よ、私に責任があると…」
    発する私の言を制しマキスタは言った。
    「例えば単にこの役職に向いていない、というのであれば止めはしません。
    しかしこの場合は違う。どうでしょう、彼女に罪を償う機会を与えてあげられないでしょうか…」
    「………」



  30. 「どうです?」 「…なぜ、私がその機会を与えねばならないのです」
    そう言われると彼は一旦私から目線を離し、そして言葉を続けた。 「彼女は罪を犯しました。まあ私から言わせれば彼女の恨みとお父上の死は別のモノにみえるが…。まあ、彼女はそれを罪とした。 しかし彼女が罪を犯さねばならないほど、葛藤していた事をあなたはわかってやれるはずです」
    「…父親を殺された……」
    「そうです。父親を殺された者の気持ちはあなたが一番分かるでしょう…」
    「しかし私は彼女の様に恨みをぶつけてはいません。憎しみに駆られ人の不幸を呪うなどという愚かな行為など…。 民の批判にも屈指ず最善の道を歩んでいます」



  31. それを聞いた彼はフッと笑い、そして再び私の目を見て、言葉を続けた。
    「本当にそうですか?民を省(かえり)みないその守護に果たして恨みはないといいきれますか?」
    「…」
    「批判に晒(さら)されている中、あなたを擁護し続けた者は誰です?ここ最近のお前の心穏やかさは誰の力でしょう?」
    「………」
    私は言葉を続ける事ができなかった。
    苛立(いらだ)ちと何かに縋(すが)りたい気持ちとドス黒い気持ちが胸に渦巻いた。



  32. 「…やはり、はいそうですか、と一言で済む案件…という訳には行かない様ですね」
    そう言って苦笑するマキスタ。
    「まあ実際の所、明日から都に行かねばならない用事がありましてね。この件は私が戻るまで一旦保留とします。
    件の巫女(シャーミン)は職を解(と)き、自室待機。あなたには引き続き神職(守護聖)を務めてもらいます。
    じっくりと気持ちの整理でもするのがいいでしょう。以上です。下がりなさい」
    「…はい……」
    俯(うつむ)いたまま、私は部屋を後にした。



  33. 師が発った後もわたしは守護の業務を行った。
    その日は朝から雨が降っていたが、神社にくる参拝客は前日よりも多い様に思えた。
    胸に淵のない穴が開いた様な…そんな虚脱感を感じながら、私は礼拝する民に向けて祝詞を唱えた。



  34. ふいに、禍々(マガマガ)シい悪寒ヲ感じた。大地ノそこカしこかラ、穢れ(ケガレ)の氣配が煙の様ニ立ち込メル。
    参拝キャくの何人カモ何か異変を感ジたラシイ。能力者デモなイもノガ穢レを感じル。余程の穢レだ…
    〈……おかしい…〉



  35. 村外で穢れ(ケガレ)が沸く事はある。しかしここには、忌火(キヒ) がある。
    忌火(キヒ) とは穢れを遠ざける灯火の事だ。鉄の様な硬木を火で焚くと、熱せられた金属の様に赤い光を周囲に投げかける。
    この赤い光は穢れ(ケガレ)を退ける為、どこの村中でも常に焚かれ、神社では特に多くの忌火を焚く。
    その神社の中にあってこれ程の穢気(アイキ)が漂うとは…



  36. と、突然、参拝客の1人が苦しみだし、足をジタバタさせた。
    それを見て私はぞっとする。
    〈そんな…これは…変異だ!〉
    それはこれまで何度も見た光景、人が破壊神になる前兆だった。
    〈ばかな?!…社の中で変異など起こるはずがない………まさか…月黄泉(ツキヨミ)……〉



  37. そこかしこで悲鳴が上がる。
    背中が膨れ、そこから何本もの腕を蜘蛛の様に生やすモノ。
    腕がもげ、首や胴を伸ばし蛇の様にのたうつモノ。
    口を肥大化させ、隣にいる人を屠(ほふ)るモノ。
    やがて村全体から怒号が押し寄せる。
    まだ無事な民は神社に駆け込んできたが神社内の惨状をみて絶望に慄(おのの)いた。
    恐怖に体が震える。



  38. 「守護神様!!どうかお助けください!!!」
    駆け寄る村人に私は途方にくれるしかなかった…
    破壊神(手段がある敵)を狩るのとはわけが違う。
    人が化け物に変わっていく、それを治す術(スベ)がない。どうする事もできない状況…

    絶望が広がる

    月黄泉(ツキヨミ)とは…守護神とはこんなにも重いモノだったのか…



  39. 自分に人々が群がる。中には変異しかかっている者もいる。
    〈せめて、これ以上の変異を止めなければ…〉
    そう思い穢れ(ケガレ)を吸おう(のもう)とした時、シャーミンの猛々しい声が轟(とどろ)く。

    「シセイ様、穢れ(ケガレ)を吸って(のんで)はいけません!!
    無事な者だけを保護し、できるだけこの地を離れてください!!!」





  40. 「…シャー…ミン…」

    そこには体のあちこちから、腕や触手を生やした痛ましいシャーミンの姿があった。
    かなり破戒神化が進んでいる。人の意識を保っているのが不思議なくらいだった。
    〈……そんな……いやだ!!…〉
    苦しさに胸が詰まる。言葉をうまく出すことができない。
    「…いや…だ……私は……たすけてやる…いま…穢れを…」
    それを見てにっこり微笑むシャーミン。
    言えなかった言葉をようやく言えたかの様に、その表情はどこか安堵と誇らしさを浮かべていた。
    「私はもウダめです。そレよりモはやク無事ナものヲ保護し非難してクださい。手遅れニなる前にはヤく!!」
    「……!!」
    私はその声から逃げる様にその場を後にした。

    「………これでようやく罪を償える…………」

    そういって彼女は化け物になった…



  41. 私は彼女の言うとおりにした。無事な民だけを引き連れ、村外を目指した。
    途中、破戒神(化け物)となった民が襲い掛かかってきたが私は無我夢中で民を守り、破戒神(化け物)となった民を切り伏せた。
    必死に走って、あえいで…そして涙が止まらなかった……
    ただただ止まらなかった……

    どれくらい走り続けたのだろうか……
    気がつけば、あたりに穢れ(ケガレ)の気配は感じられなくなっていた……
    周りにいるのは、あの地獄からなんとか生き延びた村人たち。息を切らせて喘(あえ)いでいるが、みな無事に月黄泉(ツキヨミ)から逃げ果(おお)せたようだった…
    私は民を守った…
    彼女との約束どおり……
    せめて一言……

    酷い事を言ったと謝りたかった……



  42. 査問会の会場を出るとにっこりと笑うマキスタ(師)が待っていた。
    私の処分は“咎めなし”という事になった。

    村へ帰る途中、いくつものプラカードを持つ、人々を見かけた。
    1年前にもみた光景。破戒神(化け物)によって殺され亡くなった家族や関心を持つ者達。
    書かれた内容は父を攻めた時と同じ。自分の働き、引いては今現在の守護神の在り様を批判するモノだった。



  43. 以前だったら、憎しみに駆られたかもしれない。しかし、今は以前の様に彼らに憎しみを感じはしなかった。
    親族からすれば、守るはずの守護者が守ってくれなかったのだ。誰だって、大切な人が殺されたら恨みたくもなるだろう。

    彼らを見る度(たび)にあの時のシャーミンの顔がよぎる。
    これからも私は、ただひたすらに破戒神(化け物)を狩る。 シャーミンが望んでいた様に…

    一人でも多くの民(シャーミン)を助ける為に…




    時の果たてのガンディーヴァ 設定資料集

    破戒神(化け物)
    超常の力を持ち社会に甚大な被害を与える存在。魔憑火身(マガツカミ)ともいう。

    守人(タティー)
    守る事を生業とする者達の名称の一つ。防人とも。
    穢れ(ケガレ)
    人を破戒神(化け物)に変える存在。厄災。

    月黄泉(ツキヨミ)
    地方によっては月詠み(ツキヨミ)、月呼み(ツキヨミ)、月膿(ツキウミ)、月闇(ツキヤミ)、とも呼ばれる。
    村落等人の集う場所で穢れ(ケガレ)が突如として表れ、人を破戒神(化け物)に変える厄災を指す。
    穢れ(ケガレ)は瞬時に人を破戒神(化け物)へと変えるほど強力。
    月の満ち退きに導かれて起きるとされる。絶対ではないが潮汐に比例しておこりやすい。
    穢れ(ケガレ)が噴出する事を膿むと見立て、月によって大地が膿(う)む、膿が月によって呼ばれる、その出来事から名が付いた。
    起こる範囲はおおよそ村落一つ分。さらに大きなモノは大月膿(オオヅキウミ)と呼ばれる。

    禊(ミソギ)
    守護神(能力者)は穢れ(ケガレ)を吸収する(のむ)力があり、意識して行えば多くの穢れ(ケガレ)を吸う(のむ)事ができる。
    その力は無意識時にも働き、微量ながら守護神(能力者)の周りの穢れ(ケガレ)を吸収して(のんで)いる。(その為守護神(能力者)がよくいる場所、社は清浄といわれる)
    また、守護神(能力者)は、大量の穢れ(ケガレ)に対する耐性がある。その為、ちょっとした穢れ(ケガレ)なら身体に害をなす事はない。 しかしその役職から、頻繁に穢れ(ケガレ)に接する為、徐々に体内にたまっていく。
    そのまま放置しておくと破戒神化する。その為、守護神(能力者)は各地にある専用の施設で定期的に溜まった穢れ(ケガレ)を落とす事(禊)を行っている。

    直不(チョクフ)の罪
    宗教上、守護神(ガンディーヴァ)は神の一つと考えられている。(例えば国の王も人を束ねる神と考えられ、神の一つである) また神は天と地、この世界を支える柱として考えられている。
    この天地を支える柱が垂直にまっすぐに立っている様(さま)、社会が安定している様(さま)、を“垂善(スイゼン)”といい、社会にとっては“善き事”と考えられている。
    そして、これは神々の責務であり、この柱を傾け、倒し、社会を不安定にさせる事を“直不(チョクフ)の罪”と呼ぶ。




    Gundiva in the end of time #4
    イメージボード #2




    多脚式電車